「ドラッグ・ロス」「ドラッグ・ラグ」とは
海外では承認されている治療薬にもかかわらず、日本では開発が行われていないために国内で使うことができない状況を「ドラッグ・ロス」、海外で使用されている治療薬が日本で承認され使用できるようになるまでの時間差を「ドラッグ・ラグ」といいます。
日本では希少疾病は「対象患者数が本邦において5万人未満であること」と定義されていますが、患者数が少ないことで開発コストの回収や症例数の少なさから臨床検査等の問題もあり、製薬会社では積極的に開発できないといった事情があります。
また、海外で承認されている治療薬を日本に導入する場合、人種などにより効果や副作用に差が出ることもあるため、海外で臨床試験が終了していても、日本で追加試験を行う必要があります。しかし、日本国内での患者数が少ない、あるいは、治験に参加する心的ハードルが高いために十分な治験者があつまらない、もしくは、知見実施のコストが想定収益に見合わないなどにより、日本での治験、承認が進まないといった課題もあります。
このような状況を少しでも解消するため、厚生労働省では、進行が速い疾病や日本での追加試験が難しい疾病の新薬について、承認申請の要件を緩和する施策を実施しています。また、希少疾病の治療薬を開発している海外の製薬会社の中には、日本にいる希少疾病に苦しむ患者様に薬を届けるべく、できるだけ早く日本法人を立ち上げて製品提供を行おうと取り組んでいる企業もあります。
医薬品を販売する会社立ち上げに必要な人材とは
海外製薬会社の日本法人をいち早く立ち上げるため、日系、外資系を問わず日本国内製薬メーカーでキャリアを積んだ50~60代の方々が、その豊富な経験を活かして活躍しています。
日本で医薬品を製造販売するためには「総括製造販売責任者」、「品質保証責任者」及び「安全管理責任者」の三役が義務付けられています。中でも「総括製造販売責任者」は、薬剤師の資格を持ち、「品質保証責任者」及び「安全管理責任者」をマネジメントしながら、品質管理業務、安全確保業務に関する措置を決定していく必要があり、対象となる希少な人材を確保していく必要があります。
法人をローンチし、バックオフィスも含め各部門の部門長が採用されると、次に医薬品を販売する上で営業組織(MR)が立ち上がり、希少薬についての情報を医療関係者に提供し、届ける役目を果たすMR(医薬情報担当者)が必要となります。認知度の低い希少疾患についての新薬の情報をいち早く広めるためには、医療現場に幅広いネットワークがある経験者の採用が求められます。
厚生労働省も実際に動き始めていますが、日本の「ドラッグ・ラグ」「ドラッグ・ロス」の問題は深刻で、医療現場からも多くの声が上がっています。希少疾病の治療薬を製造する海外の製薬メーカーの日本法人立ち上げには、そうした医療現場をよく知る国内の製薬事業の出身者の方々が、有効な治療薬を待つ多くの患者様にいち早く届けたいという強い思いを持って関与し、推進しています。
この記事の担当コンサルタント
ヘルスケア業界/製薬会社や製造受託企業(CDMO)の立ち上げ期から大手企業、日系企業、外資企業と幅広く担当しています。また製造販売業三役(総責、品責、安責)、薬事、CMC、SCM、工場全般、Commercial/Business Developmentなどの職種について、市場動向を把握しています。 なかでも製造販売業三役の規制要件、外資ファーマの日本法人立ち上げ、生産/品質/技術領域全般についてを得意としています。