
技術系職種を中心とした求人数の増加
図1は、JAC Recruitmentが扱う半導体関連の求人数の推移です。
2018年の日系企業の半導体関連求人数を1とした場合の比較で、2025年6月時点で日系が3.8倍、外資系が2.6倍となっており、日系・外資系問わず、求人数は右肩上がりに増加しています。ここ数年、Rapidus社、TSMC社の新工場設立や中国の半導体自国生産化により求人ニーズが加速していることがわかります。
直近はEV市場の不透明さから一部の半導体に影響はあるものの、AIを中心に投資が加速しており、ロジック半導体やメモリ半導体が伸びています。半導体の需要が増え、半導体関連人材の採用ニーズは増加しており、加えて、自動車メーカーの半導体内製化の動きもみられており、各社採用に苦戦しています。
また、日本企業では2008年のリーマン・ショック後に新卒採用をしばらく控えたことで、外資系や半導体企業以外に人材が流出したこともあり、現場を牽引する30〜40代が大変不足しているという声を多くの半導体企業から聞きます。その打開策として、育成を前提とした20代の若手人材や、即戦力の50代のスペシャリスト(シニア層)の採用へ舵を切っている企業も多く見受けられます。

次に、職種別の求人数の推移を見てみます。同じく2018年の日系企業の半導体関連求人数を1として、2025年6月末までにJAC Recruitmentで扱った求人数の推移を日系企業に絞って表したグラフが図2です。
半導体関連求人ということで、事業戦略部門やバックオフィスも本来であれば含まれますが、ここでは特に大きく伸びているエンジニア求人を抜粋しました。なかでも、プロセスエンジニア、半導体設計、デバイス開発、パッケージ開発の伸び率は高い傾向にあります。
半導体は技術革新も早く、常に新しい技術を市場に出し続けていく必要性があるため、次世代の半導体開発をけん引する開発系職種の求人ニーズが高いといえます。特にパッケージ開発の伸びは顕著で、微細化技術が限界を迎えつつあるといわれている中で、チップレットなど先端パッケージの重要性が高まっていることが表れています。また、製造の観点だと、1つの工場を稼働させるのに数百名~千名を超える人材が必要になるため、これもニーズを押し上げている理由になっています。
注目される半導体プロセスエンジニアとパッケージ開発職種
半導体業界の最新トレンドは大きく2つに分かれています。ひとつは最先端技術の追求で、これは微細化と3次元化に関する技術構築になります。もう一つは既存の半導体、例えばCMOS イメージセンサーや電力制御に使われるIGBTといった半導体素子について、材料やプロセスを見直してデバイスの性能向上を目指す技術です。今、ニーズが高い半導体プロセスエンジニアが取り組む業務は、その半導体の用途によって、この両軸で変わっていくことになります。
まず、プロセスエンジニアに求められるスキルですが、基本的には半導体プロセスに関わる実務経験が求められます。特に、半導体製造は工程数も多く、それぞれの工程において専門性も求められる傾向にあるため、特定工程におけるプロセスの経験がある場合はニーズが高いと言えるでしょう。
また、半導体業界では、チップの集積密度が18~24カ月で2倍となるというムーアの法則も、ここ数年はそろそろ限界に近付いているという見方があります。つまり微細化はそうとう難しくなっているという状況の中で、微細化にはいずれ終わりがくると言われています。そこで、更なる高性能化を目指すために注目を浴びているのが、複数の半導体チップを組み合わせて1つのパッケージに実装する「先端パッケージ」です。
先端パッケージ実現のためには、新たに多くの材料、装置の活用・開発が必要になるため、「後工程」技術の領域での経験がある方に注目が集まっており、市場価値が高まっています。ただし、先端パッケージにおいては、例えば前工程の微細配線技術を応用するようなトレンドもあるため、半導体前工程におけるプロセス開発の経験があれば、先端パッケージにおける後工程においても活躍できる可能性が十分にあります。
半導体業界で求められる人材像
人材獲得競争が激化している半導体業界では、どのような人材が求められているのでしょうか。
やはり、最も採用温度が高いのは30~40代の中堅・スペシャリスト層。いわゆる半導体業界で、専門性をもった“即戦力”となる方です。また、企業の組織構成上でも30~40代は少ないことが多いので、必ずしもリーダーやマネジメント経験が必須ということもなく、管理職候補として将来的に会社を引っ張ってくれるような人物が期待されています。
ただし、必ずしも即戦力のみを採用しているわけではなく、例えば半導体未経験であっても、若ければ大学時代に電気電子や化学、物理系を専攻していれば合格となるケースも増えてきています。また、50代~60代のシニアスペシャリスト層の採用ニーズも出てきており、幅広い年齢帯で採用のニーズがあります。年齢別でみると、20代は“ポテンシャル”を見られ、30代以降は“即戦力”が求められ、40代以降になると、より深い“専門性”が求められる傾向が強いと感じています。
この記事の担当コンサルタント

大学卒業後、大手半導体専門商社へ入社し、半導体製品のFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)として技術サポートおよび拡販業務を担当。 その後、JAC Recruitmentへ入社し、半導体業界専任コンサルタントとしてご転職希望者の転職支援および企業の採用支援の双方を手がけており、中でも半導体デバイス・製造装置メーカーへの転職、キャリアコンサルティングに強みを持つ。 現在は半導体専任チームのマネージャーを務める。