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管理職者の充実度、男女ともに7割以上

一方で、「女性管理職比率を上げるための人事が行われている」と感じている人も7割

2023年度から、上場企業は、人的資本の情報開示が義務付けられ、女性活躍への一層の注力が急務となっています。そこで今回は、一般企業で正社員として働く男女を対象に、管理職や女性活躍に関する調査を行いました。調査結果について、当社コンサルタントが解説します。主な調査結果は以下の通りです。

【「管理職実態調査」調査概要 】

■実施時期:2024年11月6日(水)〜11月11日(月)
■調査方法:インターネット調査
■調査対象:
従業員1,000人以上の企業で正社員として働く
①課長以上の管理職20代〜50代男女500人
➁20代・30代の管理職意向の男女500人、20代・30代の管理職になりたくない非意向男女500人、課長以上の管理職20代〜50代男女500人 計1,500人
※本調査は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

管理職にはなりたくない? でも現管理職の7割は「充実」

20代〜50代会社員で管理職になりたい人は25.2%。女性は17.8%と男性より11.7ポイント低い

正社員として働く20代〜50代に男女に、課長クラス以上の管理職になりたいかを聞きました。「管理職になりたい」と答えたのは全体の25.2%で、男性29.5%に対し女性17.8%と、女性の管理職意向は男性より11.7ポイント低くなっています。また、年代別に見ると、20代は34.2%と3割を超えていますが、年代が上がるごとに意向は低くなっています[図1]。

現管理職の44.2%は「希望して」管理職になり、管理職としての充実度は男女とも73.6%

次に、従業員1,000人以上の企業で、課長以上の管理職として働く20代〜50代の男女500人に聞きました。管理職になる前の気持ちを聞くと、44.2%が「希望して管理職になった」と答えています。女性は39.2%と男性49.2%より10.0ポイント低くなっています[図2]が、管理職としての充実度は、男女とも73.6%と高くなっています[図3]。

管理職になって「広い視野」で「他者の意見を聞き」「主体的に取り組む」ようになった

現管理職500人に、管理職になる前と比べ管理職になって感じられるようになったことを聞きました。すると、「広い視野が持てる」(43.4%)、「他者の意見に耳を傾けている」(42.4%)、「主体的に業務を遂行できる」(35.6%)の順となりました[図4]。また、管理職に就いて良かったことは、「収入が増えた」(54.0%)、「裁量権がある」(39.4%)、「会社の重要な情報を知ることができる」(32.4%)の順でした[図5] 。

管理職として充実している人は、「やりがい」が4倍も

3年を過ぎると管理職としての充実度が高まる

前述図3の通り、管理職としての充実度に男女差は見られませんが、勤続年数別に見ると、3年未満の人の充実度が65.9%とやや低くなっています[図6]。

やりがいの高さや広い視野を持てることが管理職としての充実につながる

また、図4の「管理職になって感じられること」を、管理職として充実している人としていない人で比較しました。すると、管理職として充実していると答えた人で、「やりがいがある」と答えた人は37.5%と、充実していない人(9.1%)の約4倍、「広い視野が持てる」は約2倍(充実している50.3%>充実していない24.2%)となっており[図7]、これらの点が管理職としての充実感につながっていると推測できます。

管理職に就く上での課題は会社のサポート不足とロールモデルの不在

男女ともに管理職になって悩むのは「ストレス」「部下の育成」
女性管理職は3割が「男性優位の環境」と感じている

管理職になって悩むこと・課題に感じることを聞くと、管理職男女では「ストレスが増えた」(41.8%)、「部下の育成が難しい」(37.8%)、「ハラスメントにならないために気を遣う」(37.2%)、「業務負荷が大きい」(32.6%)が上位に挙げられました。男女別で見ると、「ストレス」「部下の育成」などは男女共通の課題といえます。一方、「男性優位の環境である」と感じる女性管理職(27.2%)は男性管理職(3.2%)の8.5倍と大きな差がみられました[図8]。

管理職に就く上の課題は、「会社のサポート不足」と「ロールモデルの不在」

1,000人以上規模の企業で働く20代・30代の正社員男女1,000人に、管理職に就く上での課題を聞くと、約6割が「会社によるサポートの不足」(65.0%)、「ロールモデルの不在」(61.8%)、約4割が「性別による偏見」(39.3%)を挙げています。ロールモデルの不在は女性(69.4%)に多く、管理職意向女性では72.0%と特に高くなっていますが、男性の管理職意向者でも58.0%と約6割の人がロールモデルを求めていることがわかります。なお、性別による偏見は、女性(52.0%)は男性(26.6%)の約2倍と多く、管理職意向の女性では61.6%とさらに高くなっています[図9]。

現管理職の7割が、“女性枠”の存在を実感

世界経済フォーラム(WEF)の「Global Gender Gap Report」(グローバル・ジェンダーギャップ・レポート、世界男女格差報告書)の2024年版によると、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中118位と低く、特に、経済分野における 管理的職業従事者の男女比は0.171(「0」が完全不平等、「1」が完全平等)で130位と、低くなっています。日本政府は、企業における女性の参画拡大は、多様性の向上を通じてイノベーションを喚起し事業変革を促し、企業価値を高めることにつながることから、日本経済の今後の成長にとって喫緊の課題とし、「女性版骨太の方針2023」にて、プライム市場上場企業は2030年までに女性役員比率を30%以上とする目標を掲げています。また、2023年3月期決算から、上場企業を対象に人的資本の情報開示が義務化され、女性活躍推進法に基づき「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」に関する開示が原則として義務付けられています。   

出典:Global Gender Gap Report 2024 https://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2024.pdf

現管理職の7割が「女性管理職の比率を上げるための人事が行われている」と感じている

このような動向を受け、企業では女性活躍への注力が急務となっています。そこで、会社内における女性管理職の処遇や位置づけについて、現管理職に聞きました。まず、①女性管理職比率を上げるための人事が行われていると感じるかを聞くと、70.0%が「そう思う」と答え、女性(67.6%)以上に男性(72.4%)の方が強く感じています。具体的には「女性の方が実力に比べ出世しやすい」(42歳 男性)、「女性管理職比率を増やす目的で、優秀な男性社員が管理職になれない」(53歳 女性)といった声が寄せられています。一方、②管理職としての適性の評価基準が男性管理職の働き方をベースに作られていると感じるのは、男性(44.4%)より女性(62.0%)の方が17.6ポイントも高く、「昇進は性差を感じないが、求められる業務内容・負荷は男性基準」(45歳 女性)、「女性管理職の人数は増えているが会社としてのフォローがない」(53歳 女性)といった声が寄せられました[図10①②]。

また、③性別が理由で昇格できたと周りから見られるかと聞くと、男女差(男性32.4%:女性36.4%)はあまりないものの、30代では51.0%と約半数が性別での昇格を感じています。さらに、④女性は課長になることができても、それより上の役職に就くことが少ないと感じているのは、男性(34.4%)より女性(53.2%)に多く、女性管理職の約半数が課長止まりの「ガラスの天井」を感じ、30代では62.3%とさらに高くなっています。管理職の声が聞こえてくる30代は、女性管理職の処遇が自分ごと化され、関心が高くなっているようです[図10③④] 。

ビジネスパーソンの7割が女性管理職や女性の活躍を歓迎

職場での女性活躍、約7割が「進んでいる」と実感

1,000人以上規模の企業で働く正社員男女1,500人に、自身の職場での女性活躍について聞くと、全体の66.7%と約7割が職場での女性活躍が「進んでいる」と答えています[図11]。一方、職場での女性活躍が進んでいないと答えた人に理由を聞くと、「女性社員の比率が低い」(41.4%)が最も多く、次いで「業界全体で遅れている」(29.0%)、「男女の役割に対する固定観念や偏見が根強い」(27.0%)、「環境・制度が整っていない」(24.8%)などの理由が挙げられました[図12]。

ビジネスパーソンの約7割が「女性管理職が増えてほしい」「女性活躍は企業価値を高める」と歓迎

正社員男女1,500人に女性活躍について聞くと、69.8%が「職場で女性管理職が増えてほしい」、73.5%が「企業が女性活躍を推進することは企業価値向上につながる」と答えています。正社員の約7割が女性活躍や女性管理職の増加は、企業にとって有益だと考えているようです[図13]。

今後、職場で求められるのは、大掛かりな改革よりリアルな改善。実態に即したルール作りが課題に

正社員男女1,500人に、職場に既にある制度と今後期待する制度を聞き、既にある制度より期待する制度のスコアが高いものを見ると、「育休取得者が出ても周りに大きな負担が生じない環境」(21.5%)、「昇進基準の明確化」(19.4%)、「社内ロールモデルの可視化」(14.0%)でした[図14]。今後のさらなる充実が望まれる職場の女性活躍には、大掛かりな制度改革よりも、実態に即した実効性の高いルール作りが必要となってくるようです。

コンサルタントによる調査への見解

今回の調査結果について、ジェイ エイ シー リクルートメントのコンサルタントは下記のような見解を述べています。

■コーポレートサービス第2ディビジョン 部長  水上 悠一

人材流動化に伴い、ポータブルスキルとして管理職キャリアを形成する志向が増加

終身雇用を前提とした場合の「管理職」は、その会社に添い遂げて、メンバーよりも高い貢献度を求められ、常に上の役職を目指していくポジションのイメージがあったように感じます。これは社会人になったばかりの若い方にもそう見えているので、数社でのキャリアを積もうと考えている若い人ほど、管理職への壁を感じているのではないでしょうか[図1] 。
しかし、昨今の転職による人材流動化の中で管理職のキャリアが、自分の強みであり、どこでも通用するポータブルスキルであることが認識されてきていると思います。終身雇用が崩れている中で今後のキャリア形成を考えたときに、他の専門職と同様に「管理職」という専門職をキャリアとして積んでいくことも選択肢の一つだと認識され、現在の職場ではチャンスが無いため転職して管理職にチャレンジするケースもあります。また、どの職種でもそうですが、自身のスキルとしてしっかり身に付くほど自信とやりがいを見出せることが多いので、3年以上、管理職を続けた場合に充実度が上がっていくというのは、納得の結果でした[図3]。企業も欠員募集や社内人材になり手がいないなどの理由だけではなく、若手人材の育成、事業成長のための組織運営など、さまざまな理由で「管理職」の求人を出しており、実際に管理職経験者のマーケットバリューは上がっています。求職者もそれを意識したキャリアの構築をしているように感じます。

女性管理職の増加は、アイデアの多様性や組織改革に

私の実体験として、男性だけのプロジェクトチームに女性が入ったことで男性だけでは浮かばなかったアイデアが生まれた例もあります。女性メンバーからの提案で、定型業務を見直してターゲットごとに業務を細分化したところ、明らかに良い反響が出てきています。男性だけでは気付かなかった配慮がそこに生かされていました。プロジェクト内の一つの業務でさえ、このような変化が生まれるので、男性が多いとされている管理職に女性が増えることで、組織としての大きな変化が期待されると考えます。 
キャリア採用において、多くの企業が「マルチな管理能力」と「経営目線を持つこと」を管理職に求めています。特に「マルチな管理能力」については、従業員の多様な働き方やハラスメント対応といったこれまでに無かった労務管理も含まれていますが、それこそ男性だけでは気付けない環境の整備が、女性管理職を増やすことによって実現され、企業としてのエンゲージメント向上につながることにもなると思います。

コーポレートサービス第1ディビジョン マネージャー  大村 薫子  

管理職意向がありながらも、オールドボーイズネットワークに阻まれて転職する女性も

求職者との面談で、管理職を希望する女性が以前より増えていることを実感しています。現在管理職をされている方が、継続したいというのはもちろんですが、現在の職場で管理職になれないのではないか、もしくは、なったとしても活躍できないのではないかという不安から、転職することで管理職の機会を得られないかというご相談も多いです。
女性活躍をうたっている職場でも、実際に活躍できているロールモデルがいなかったり、周りの友人の職場の話を聞き、現在の職場では難しいと見切ってしまったりするのですが、そこにはまさに目に見えないオールドボーイズネットワークが存在していると伺います。
今回の調査でも、「男性優位の環境である」ということが、女性管理職の課題感として挙がっていますが[図8]、男性中心で築かれていた組織構成に存在する暗黙のルールやネットワークが、女性の活躍を阻み、優秀な人材が流出してしまっていることが懸念されます。
また、男性に支えてもらおうと考える女性は確実に減っており、それなりの年収や立場を得て自立していくためのキャリアビジョンを考えていくと、おのずと管理職という選択肢が出てきます。できるか否かの判断も含め、一度は経験して見極めたいというお話は、30代後半の方からよく伺います。

女性管理職を採用する本来の目的を見失った企業は、候補者にも見透かされてしまう

2030年までに大企業の女性管理職比率30%以上を目標とする政府の働きかけもあり、企業から女性管理職の求人をお預かりすることが増えました。ただ、この数字目標を達成するためだけに求人を出してしまうと、現場とのミスマッチが起こってしまいます。
人事としては政府や投資家へアピールするために、空いているポジションにとにかく女性を入れていくという考え方になりがちですが、当然、現場としては性別にかかわらずそのスキルを持った即戦力を望んでいるので、なかなか決まらない、もしくは入社したけれどお互いに条件が合わないといったことが起きてしまいます。
単純に女性管理職を増やしたいというだけで部下がおらず、本来の管理職業務ができない管理職採用であったり、プロパー社員でないと部長以上になれない職場に就職してしまったため、再度転職を考えたいとご相談をいただくこともあります。また、スキルがあっても子育てや介護を理由として、採用を見送る企業も残念ながらあるのが実情です。女性も管理職として価値あるキャリアを積みたいと考えていますので、選考がある程度進んでくると、そのような企業の考え方や環境を敏感に感じ取ります。優秀な女性管理職を採用したいと考える企業は、女性管理職を増やすことの意義や必要性を改めて認識することが求められていると感じます。

調査報告書

調査報告書はこちらからダウンロードできます。

この記事の担当コンサルタント

バックオフィス

水上 悠一

コーポレートサービス第2ディビジョン 部長

日系中堅~小規模企業、IPOフェーズ企業の管理部門全般を網羅しており、特に管理職クラスや専門性の高いポジションの採用/転職支援の経験が豊富。 実際の面談や商談も行い、日々マーケットの動きをキャッチアップしている。求職者、クライアントと直接対話することによって、求職者のコアキャリアと今後キャリア形成を踏まえた求人のご紹介、クライアントの経営課題の解決につながるご紹介を心掛けている。

バックオフィス

大村 薫子

コーポレートサービス第1ディビジョン マネージャー

2024年1月に立ち上げた日系大手~準大手企業の人事・法務・総務などの管理部門職種を専門に支援するチームに在籍し、メンバーとともに職種理解の深いプロフェッショナルコンサルタントを目指して業務に従事。SDGs・CSR・ESGなどの職種に関する理解も深めており、中長期的な企業経営や登録者のキャリア理解を心掛けている。

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